星秀理論『ガッツポーズ投法』 [星秀横丁.com]

ガッツポーズ投法



●ガッツポーズ投法とは

 ガッツポーズ投法と聞いて、どのような投法を想像されるでしょうか。投げ終わった時に、思わずガッツポーズをしてしまうくらいの投法かもしれませんが、それが語源ではありません。投げ始めのトップの形がガッツポーズに似た形になるため、ガッツポーズ投法と名付けました。

●ガッツポーズ投法の基本

 それでは、投法についてもう少し細かく説明しましょう。利き手でガッツポーズの形を作ってください。ガッツポーズでは手を力強く握るかもしれませんが、ボールを握るので軽く握ってください。この形が基本になります。
 投手にとって大事なことは、故障しない投げ方をすることです。私は、自分の経験からこのことを最も重要視し、テイクバックの取り方に鍵があることに気付きました。ガッツポーズを作るようなテイクバックは、腕の筋肉や関節に対して最も負担が少ないと気付き、これを理論とすることにしました。
 投げる時、一度手を下に下げてからトップでガッツポーズを作っても構いません。とにかく、トップでこの形ができれば良いと考えています。その前後の動きは自由に考えていますので、自分に合ったタイミングを見付けると良いでしょう。

●なぜガッツポーズなのか

 なぜ、ガッツポーズが良いのかと疑問に思うかもしれませんが、ガッツポーズが本当に意味するところは、ボールの指す方向にあります。ガッツポーズを作った時、ボールはやや打者方向に向いています。一般的には、打者ではなくセカンド方向を指していると良いとされています。ガッツポーズ投法は、全く逆の理論になっているのです。
 全く逆で上手くいくのでしょうか。セカンドを指す形のテイクバックでも、切り返しが上手にできるタイプの投手なら問題がないと考えます。もちろん、プロ野球選手などは切り返しが上手にできるため、このテイクバックでも上手く投げられると言えます。しかし、少年やアマチュアの選手の中には、切り返しが上手にできない方もたくさんいます。このような選手は、セカンドを指すテイクバックでは、なかなか上達しにくいと考えました。私の理論は、このような選手に有効的な手段と言えます。現状、プロ野球選手の真似をしても上手く投げられないという方は、この投法を試してみる価値があるかもしれません。

●ガッツポーズからの流れ

 次は、トップからの腕の振りについて説明していきましょう。ガッツポーズの形からどのように腕を振れば良いのでしょうか。ボールはやや打者方向に向いている状態から、肘を少し前に出すような感じで腕を振ります。その時、瞬時に手のひらが地面に向くようにします。親指が内側から外側へ、ややひねられるような感じがすると思います。シュートを投げる時の感覚に似てるかもしれません。しかし、この投げ方がストレートを投げる投げ方になります。このように振らないで投げた場合は、ボールはスライダーのような回転をしてしまいます。試してみるとすぐにわかるかと思います。
 今まで少年たちを指導する中で、トップの形から投げると自然にスライダーとなってしまう人がたくさんいました。そういう人に、シュートをイメージして投げるようアドバイスを与えると、ストレートで投げることができました。もしガッツポーズ投法を始めたときに、ボールがスライダーのように回転してしまったときは、シュートを意識して改善すると良いでしょう。

●今までの投法との違い

 セカンド方向を指した形でも、切り返しが上手であれば上手く投げることができると説明しましたが、それであれば切り返しを上手にすれば良いのではないかと考える方も多いでしょう。しかし、もし切り返しが上手に行えるようになったとしても、体の内部に違いがある場合があります。体の内部の違いとは、筋肉の動かし方が違ったり、主に使う筋肉が違うことを指します。これらの違いは、体に与える負担の違いに繋がります。ボールをたくさん投げれば投げるほど、負担に差が出てしまう場合があるのです。
 ガッツポーズ投法は、テイクバックの形は違えど、最終的には同じ振り方で投げ終えることができます。最終形を変えずにテイクバックの形を変えることで、負担を最小限に抑えることができると考えました。これは、全ての野球選手が使える有効的な投法であると言えるでしょう。

●下半身の形

 腕の負担を軽くするために、下半身の形と使い方も重要なポイントとなります。まずは形から説明します。踏み出す足が着地した状態の時、利き側が腰を視点にしてわき腹と軸足の膝までのところでくの字の角度がついていることがポイントです。例えば右投げの投手の場合、右側のわき腹と軸足までになります。わき腹ではなく肩まででも良いでしょう。この時の肩のラインは、利き手の肩がやや下がり、反対の方は少し上がる形になります。膝から足元までは、地面に垂直に近付けるようにしてください。完全に垂直にすることは無理だと思いますので、膝が前に流れないように頑張るということと認識してもらえれば良いです。真横から見ることで、正しく判断ができるでしょう。
 この体勢は非常に難しい形かと思いますが、これが重要なポイントになるのです。この体勢が力がよく溜まっている状態になるため、私はこの体勢を「タメ」と表現しています。

●下半身の使い方

 タメの形では、前足の膝は伸びきっている状態になるかと思います。そのため、次に必要なのはタメから前足への体重移動になります。
 前足の膝を曲げると膝頭が前に移動し、腰も前に移動します。それに伴い、軸足の膝が伸びきる形になるでしょう。この時点で、腰はまだ回転していない状態になります。少しでも早く回転してしまうと、前足の膝が突っ張ってしまい、腰の移動ができなくなってしまいます。ここが、最大のポイントです。回転で投げる意識を失くすことが、私の理論といえるかもしれません。しかし、最後には腕を振るため腰は回転します。回転で投げるというわけではなく、腕を振ることによって腰が回転するという順序になることがポイントになります。前足の膝に移動すると同時くらいに、自然に腰が使われる感じになるかと思います。軸足は、できるだけプレート板に付けたまま投げきることです。そうすることで、前足の膝が曲がるタイミングに腰を回転させることができます。
 この方法は、腕の振りがシャープになることや、リリースの安定、球持ちが長くなるなどの効果を生み、スピードやボールの伸び、コントロールに大きな影響を与えると考えています。

●下半身の動き

 今度は、前方より動きを確認します。ここでは、特に開きについて観察することになります。前足の着地時点でのつま先と膝頭の状態と、前足を踏み出していく時のグラブの位置について説明します。
 ワインドアットして前足を前方へ出していく時に、グラブを持った腕は伸ばしきり、グラブを右打者の方向に出ている形が良いと考えます。前足が着地した時、つま先の位置はやや内側に入った形を最善と考えます。この形が上体の力を力強く受け止められるため、よりシャープな腕の振りができると言えます。パワーが外側に逃げず、直線的に打者方向に向かうようになるため、ボールに全体重が乗り移り、終速が良くなる効果にも繋がります。このとき、つま先と膝頭が割れないように注意しましょう。

●真似するならこの選手!

 現在、現役の投手でこのテイクバックに近い形を作っている選手がいます。それは、中日ドラゴンズの岩瀬投手です。岩瀬投手は、ボールを持つ手を後方に大きく伸ばすようにしていますが、その時のボールはセカンド方向を指しています。その形から後頭部近くに手が近付きトップの形となり、この時にガッツポーズの形になります。下半身は、まさにこの理論の形通りです。軸の膝から下は垂直に近く、着地した前足の形は、つま先、膝、共にやや内側に入っている形です。まさに見本と言って良いでしょう。
 この形が全て自然に備わっている岩瀬選手は鉄腕とも呼ばれ、腕の故障を耳にしたことがありません。毎年すごい登板数をこなすことができる秘訣はテイクバックにあり、私の理論の裏付けになると言えるのではないでしょうか。他にも近いテイクバックの投手もいらっしゃいますが、岩瀬投手が最も近いため、例として挙げさせて頂きました。

●最後に

 私が現役の時、このようなテイクバックとは違い、肘から上げてしまっていました。そのためか故障の連続となり、13年間のプロ野球生活で、満足なシーズンを送ったことは一度もありませんでした。体力の問題や精神力の問題ではないかと反省していましたが、今思うと、テイクバックの問題が大きかったのではないかと感じています。ほとんど投げられなくなっていた私の腕は、このテイクバックを考え出してから、マスターズリーグで投げられるようにまでなりました。これらの経験から、まさしくテイクバックの方法が重要であるのではないかと言えるようになりました。
 今現在、腕の痛みと戦っている人、将来のある選手の人には、是非この投法を取り入れて頂きたいです。私自身、もし若い時代に戻れるなら、絶対にこの方法を取り入れます。そのくらい自信がある投法です。

ガッツポーズ投法が皆さんの力になり、本当のガッツポーズができることを心より願っています。


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